体力の本質とは?目的に応じたフィットネスの考え方
「体力」という言葉を聞くと、マラソン選手の持久力やボディビルダーの筋力を思い浮かべるかもしれません。しかし、体力は一つの指標だけで測れるものではなく、目的や環境に適応するための総合的な能力を指します。
実際、英語で「体力」は**fitness(フィットネス)**と訳されます。この言葉には、「環境や活動に適応する能力」という意味が含まれています。つまり、スポーツや日常生活で求められる体力は、人によって異なり、その目的に応じたフィットネスが必要になるのです。
体力の種類と構成要素
1970年代から「体力」はいくつかの構成要素に分類され、スポーツ科学の研究とともに発展してきました。体力テストなどで測定される主な要素は以下の通りです。
- 筋力(Strength):筋肉が発揮する力の大きさ
- 筋持久力(Muscular Endurance):長時間筋肉を使い続ける能力
- 全身持久力(Cardiorespiratory Endurance):心肺機能を含めた持久力
- 瞬発力(Power):短時間で大きな力を発揮する能力
- 柔軟性(Flexibility):関節や筋肉の可動域
- 平衡性(Balance):姿勢を維持する能力
- 敏捷性(Agility):素早く方向を変える能力
- 巧緻性(Coordination):身体を精密にコントロールする能力
こうした要素は、スポーツ選手だけでなく、日常生活でも大切です。たとえば、高齢者が転倒を防ぐには「平衡性」や「敏捷性」が、長時間のデスクワークによる肩こりを防ぐには「筋持久力」や「柔軟性」が重要となります。
体力の発揮を制限する要因
体力は、ただ鍛えれば向上するわけではありません。実際にどれだけ発揮できるかは、生理的限界と心理的限界の2つの要因によって左右されます。
1. 生理的限界
これは、その人が持つ純粋な体力の最大値です。例えば、100kgのバーベルを持ち上げる力があったとしても、常にその最大値を発揮できるわけではありません。
2. 心理的限界
生理的限界とは別に、心理的な要因が体力の発揮を制限することがあります。
- **モチベーション(やる気)**が高いと、普段より高いパフォーマンスを発揮できる。
- 緊張や不安が強すぎると、筋肉が硬直し、実力を発揮しにくい。
- 集中力の状態によっても、瞬発力や持久力が変わる。
たとえば、スポーツの試合では普段の練習以上の力が出ることもあれば、逆に緊張で動けなくなることもあります。
体力発揮を高める方法
多くの人は、自分が思っているよりも高いレベルの体力を持っています。しかし、その体力を最大限に発揮するためには、以下のアプローチが重要です。
1. 身体のコンディションを整える
疲労や筋肉の硬直、関節の可動域の制限は、体力の発揮を妨げる要因になります。そのため、
- ストレッチや筋膜リリースで柔軟性を向上させる。
- 適切なウォームアップで筋温を上げ、動きをスムーズにする。
- 十分な休息と栄養補給で回復を促す。
といったケアを取り入れることで、持っている体力をしっかり活かせるようになります。
2. メンタルトレーニング
心理的限界を克服し、最大限のパフォーマンスを発揮するには、
- イメージトレーニングで自信を高める。
- 呼吸法や瞑想で緊張をコントロールする。
- 試合や本番を想定した練習を行い、環境に適応する。
こうした方法を取り入れることで、心理的要因による体力発揮の制限を減らすことができます。
まとめ
体力は単なる筋力や持久力ではなく、目的に応じて発揮される「適応力」です。環境や活動に合わせたフィットネスを高めることで、スポーツだけでなく日常生活の質も向上します。
また、体力の発揮には生理的・心理的な要因が関わっており、適切なトレーニングやケアを行うことで、より高いパフォーマンスを発揮できます。
「もしかして、私はもっと動けるかも?」と思ったら、今日から自分の体力を最大限に活かす工夫を始めてみてください!

おわりに
体力を英語で表すとfitnessとなります。つまり適応性。環境や作業や活動などに適応するということ。
スポーツだと、例えばサッカーをプレイするという活動に適応できていて、その結果良いパフォーマンスを発揮できると、体力が備わっているということになります。

つまり、どの活動や環境に適応するのかによって、fitnessつまり体力は様々存在する。その環境下において、その活動を充分に遂行することができる状態かどうか。
スポーツで言うと、その種目において、目的とする結果を得るために、高いパフォーマンスを発揮するというタスクに適応する能力と言えるでしょう。
つまり、何のための、どんな目的を達成するための体力かということですね。やみくもに体力を強化するぞと頑張っても、そこで養った体力が、何かの目的のために効率的に役立つかと言えば、そうとは限らないのですね。

1970年代から、体力について考えるときの定番の分類として、体力の構成要素というものがあります。例えば、体力テストをするときの、測定項目がこれにほぼ相当します。筋力,筋持久力,全身持久力,瞬発力(パワー),柔軟性,平衡性,敏捷性,巧緻性など。
もちろん時代が下るにしたがって、こうした項目の中身も、より研究されて進んだ内容となっています。

体力テストを行って、これらの要素の現状を評価して、目的を達成するにはどのように改善が必要かを吟味したうえで、トレーニングを行うのですね。
一方、各要素がどういった水準にあるかということと共に、各要素がテストにおいて、どれくらい発揮されたのかということも、テスト結果を左右します。
体力が発揮される際に、生理的限界と心理的限界があるとされています。生理的限界とはその人が持っている体力の要素の限界値そのもの。ところが、誰であっても、限界値を出し切ることはほぼ不可能、極めてまれな状況を除いて。その都度、体力の発揮を制限する要因が作用している。その結果の限界値を、心理的限界といいます。心理的限界はその時折で変化します。やる気の水準だったり、緊張だったり、集中力だったり・・・・・・。

体力をどのレベルまで発揮できるかというのは、心理的要因だけによって制限されるのではなく、フィジカル面の状況やコンディションによっても制限されています。
疲労はその最たるものですし、例えば筋肉や靭帯のその時の状態も。筋肉の温度であったり、それこそ筋膜の状態であったり。

トレーニングして体力の各要素を強化する以前に、現有の体力をどれくらい発揮することができるか。それも心理的要因以外においても、身体的要因を改善すると、体力の発揮レベルを高くできる。
つまり、多くの人たちは、自分で思っているよりも高いレベルの体力を持っている。
そう考えても間違いではないということですね。
筆者:竹内 研(一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長)
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