ワンコ達はなぜ尻尾を振るのか?最新研究で分かった進化の2つの仮説

ワンコ達が喜びを表すときに尻尾を振る行動は、ワンコを飼ったことがない人でも広く知られています。しかし、祖先であるオオカミはほとんど尻尾を振らないって知ってましたか?
なぜワンコ達は頻繁に尻尾を振るように進化したのでしょうか?この問いに対し、オランダ、イタリア、オーストリア、デンマーク、アメリカの生物学者らが研究チームを組み、科学的に解明を試みました。

研究チームは、これまで発表された犬の尻尾振りに関する論文を分析し、「ティンバーゲンの4つのなぜ」という視点から、ワンコの尻尾振りのメカニズムと進化の背景を整理しました。そして、尻尾振りの進化に関する2つの仮説を提唱し、その研究成果を学術誌 Biology Letters に発表しました。

ノーベル医学・生理学賞を受賞した動物行動学者ニコ・ティンバーゲンは、生物の行動を説明する際に以下の4つの観点を用いるべきだと提唱しました。

  1. メカニズム(機能的要因):行動がどのような生理的・神経的プロセスによって発生するのか
  2. 個体発生(発達的要因):個体の成長過程でその行動がどのように形成されるのか
  3. 機能(適応的要因):その行動が生存や繁殖にどのような利点をもたらすのか
  4. 進化(系統発生的要因):その行動がどのような進化的背景を持つのか

尻尾は脊椎の延長であり、多くの脊椎動物が持つ特徴です。本来、移動時のバランスを取る、害虫を払う、何かにぶら下がるなどの機能を持つとされています。しかし、犬の場合は特に コミュニケーションツールとしての役割が強いことが報告されています。

ワンコの尻尾振りには犬種差や個体差がありますが、オオカミをはじめとする他のイヌ科動物と比べても、ワンコは頻繁にさまざまな状況で尻尾を振ることが知られています。さらに、オオカミと犬の子どもを同じ環境で育てた場合、ワンコのほうが 生後3週間ほどで尻尾振りの行動を示し、頻度も高い ことが確認されています。オオカミも低い位置でゆっくりと尻尾を振るなどのコミュニケーション手段を持ちますが、その使用頻度はワンコ達には及びません。

研究によると、ワンコの尻尾振りは単なる左右対称の動きではなく、その 感情によって振る方向や振れ幅が変化 することがわかっています。

  • 右寄りに振る:ポジティブな感情(人や他の犬に親しみを感じるとき)
  • 左寄りに振る:ネガティブな感情(警戒や恐怖を感じるとき)

この左右差は脳機能に起因しており、ポジティブな感情は左脳、ネガティブな感情は右脳が主に処理しているためと考えられています。さらに、ワンコ同士がこの 尻尾の振り方の違いを認識し、相手の感情を読み取っている ことも明らかになっています。

研究チームは、ワンコがオオカミと異なり頻繁に尻尾を振るようになった理由として、次の2つの仮説を提唱しました。

1. 家畜化による副産物説

人間は家畜化の過程で、より従順で攻撃性の低い犬を選択してきました。その気質と尻尾振りの行動が遺伝的に関連しており、結果的に頻繁に尻尾を振る犬が増えた可能性があります。

この仮説を裏付ける例として、ロシアで行われた ギンギツネの家畜化実験 があります。この研究では、ヒトに懐きやすいキツネを世代を超えて選択的に繁殖させたところ、毛色の変化や耳の形の変化に加え、 尻尾をよく振るようになる という行動変化も見られました。このことから、ワンコの尻尾振りも同様の家畜化症候群の一部である可能性が示唆されます。

2. リズムへの選択説

もう一つの仮説として、人間が リズミカルな刺激を好む傾向 により、尻尾をよく振る犬を意識的または無意識的に選択した可能性が挙げられます。認知神経科学の研究によると、ヒトの脳は等間隔なリズムを心地よいと感じ、報酬系のネットワークが活性化します。

ワンコの尻尾振りのリズムは完全に一定ではないものの、人がこの動きを好ましく感じることで、尻尾をよく振るワンコが繁殖の過程で選ばれやすかったのではないかと考えられます。

研究チームは、これらの仮説を検証するためには 尻尾振りの動きを定量化 し、

  • 振る方向
  • 速度
  • 振り幅
  • 意識的な制御の程度

などを体系的に分析する必要があると述べています。

特に、ワンコが どの程度意識的に尻尾を振っているのか についてはまだ不明な点が多く、

  • 意識的に制御できるのか?(人の呼吸のように)
  • 無意識的に起こるのか?(顔が赤くなる現象のように)

といった点を解明することで、ワンコの認知能力や行動の理解が深まると期待されています。

ワンコの尻尾振りは日常的な行動ですが、科学的にはまだ多くの謎が残されています。この研究が進むことで、犬と人間の関係性や、犬が進化の過程でどのようにコミュニケーション手段を発達させてきたのかが明らかになるかもしれません。今後の研究が、人と犬のより深い相互理解につながることが期待されます。

ワンコ達の生活に慣れてくると尻尾を振ってくれるのが当たり前になってきたりします。
ただ…月日が過ぎてしまうとなんとなく…

「あれ、最近うちの子、尻尾をあまり振らなくなったかも…?」

そう感じている飼い主さん、いらっしゃいませんか?ワンコ達の尻尾は、感情表現のバロメーター。嬉しかったらブンブン振るし、怖かったらキュッと下げる。そんな尻尾の動きが鈍くなると、心配になりますよね。

実は、ワンコもヒトと同じように、歳をとると体のあちこちに変化が現れます。その一つが、尻尾の動きの変化なんです。ワンコ達の尻尾の動きの変化は、老化のサインかもしれません。もしかしたら…トラブルのサインだという事もあるかもしれません。

でも、適切なケアと愛情があれば、シニア犬との暮らしも、きっと笑顔あふれる素敵な時間になります。
笑顔あふれる毎日のために愛するワンコ達のためにケア習慣を身につけてみませんか?

日頃のケアひとつで未来の健康をサポートすることにつながります。
『さわる』事や『さする』事も大切なケアのひとつです。

投稿者:MEDICO

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