ワンコを内側から整える。“経絡別ケア”で巡りをサポートする新習慣

「最近うちの子、なんだか元気がない…」
「年齢のせいかな…でも何かしてあげたい」

そんな飼い主さんの声をよく耳にします。 でも、特別なサプリや薬を使わなくても、 『触れることで巡りを整える』方法があるのをご存じでしょうか?

そのヒントは、東洋医学に古くから伝わる「経絡(けいらく)」という考え方にあります。

本記事では、『ワンコの経絡に沿った“経絡別ケア”』をテーマに、 五臓六腑や体調と関連づけながら、家庭でもできるケアの具体例をご紹介します。

    

経絡とは?の体にも“流れ”がある

東洋医学では、生命活動の根本には「気(エネルギー)」「血(栄養)」「津液(水分)」の3要素があるとされ、これらが体内を巡ることで健康が保たれると考えられています。この巡りのルートこそが「経絡(けいらく)」です。

経絡は全身を網の目のように張り巡らされたエネルギーと情報の通り道であり、内臓、筋肉、神経、皮膚、さらには感情までをつなぐネットワークとして機能します。西洋医学的には完全に一致する構造がないものの、近年では自律神経や筋膜ネットワーク、経皮的電気刺激の伝導パターンとの相関が研究されており、「経絡的反応」は無視できない臨床現象として扱われることが増えてきました。

    

▶ 科学的な補足と研究事例

例えば、2010年に北京大学の研究チームが発表した報告では、赤外線熱画像診断において経絡に沿った特定の温度変化のパターンが確認されており、外部刺激によって“気の流れ”とされる経絡上に物理的変化が見られることが示唆されました。また、経絡の経路上に沿って皮膚電気抵抗が低い部位が連なって存在するという実験結果も複数あり、生理学的な実体を裏付ける根拠として注目されています。

犬においても、ツボ刺激や経絡のマッサージによる行動変化、ストレス反応の軽減、可動域改善などが多数の臨床現場で報告されており、獣医鍼灸(Veterinary Acupuncture)は欧米を中心に正式な補完医療として認められている国も増えています(IVAS:国際獣医鍼灸学会 など)。

    

▶ 犬の体における“流れ”の意味

ワンコは言葉を使って不調を訴えることができませんが、経絡に沿ってやさしく触れることで、体の冷え、張り、皮膚の質感の違い、過敏な反応などから、内臓や神経の乱れにいち早く気づくことができます。これは東洋医学でいう「未病(みびょう)」、すなわち“病気になる前の兆し”を察知するという概念そのものです。

経絡を整えるケアは、

  • 健康状態の“センサー”として体の変化を感じ取る
  • 自律神経や感情に作用してストレスを緩和する
  • 自己治癒力を高め、病気予防に役立つ

という多面的なアプローチが可能です。

つまり、経絡とは単なる概念ではなく、身体と心をつなぐ“システム”としての実用的価値があるのです。

東洋医学では、生命活動の維持に欠かせない「気(エネルギー)」と「血(栄養)」が、 体内を循環していると考えられています。 この循環のルートが「経絡(けいらく)」であり、 それぞれの経絡は内臓や筋肉、皮膚、そして感情とも深く結びついています。

人間と同じように、犬にもこの経絡は存在し、 体表から内臓へ、内臓から体表へと“双方向的”に影響を与え合っているとされます。

▶ 経絡の構造と役割

経絡は、体の表面を走る「経脈」と、体内を通る「絡脈」から構成されており、 全身にくまなく張り巡らされることで、

  • 栄養の運搬(血)
  • エネルギーの調整(気)
  • 老廃物の排出(津液)
  • 体温・免疫の調整 を担っていると東洋医学では考えられています。

さらに、経絡には「未病(みびょう)」の段階で異常が現れるという特徴もあります。 つまり、症状が出る前の体の不調サインが、経絡を通じて感知できるのです。

また経絡は、内臓機能だけでなく、感情のバランスにも密接に関係しています。 東洋医学では「肝は怒、心は喜、脾は思、肺は悲、腎は恐」といったように、 五臓と感情がそれぞれリンクしているとされます。 そのため、ストレスや環境の変化による情緒の乱れが、 経絡に反応として現れることもあり、 逆に経絡を整えることで、感情が落ち着くケースもあるのです。

    

経絡と五臓六腑の関係:体と心のネットワーク

東洋医学では、経絡は単なるエネルギーの通り道ではなく、 五臓六腑(ごぞうろっぷ)と深く連携しています。

五臓とは「肝・心・脾・肺・腎」、 六腑とは「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦(さんしょう)」のこと。 これらは単に解剖学的な臓器を指すのではなく、 それぞれが機能的・エネルギー的な働きを象徴しています。

そして、それぞれの臓腑は特定の経絡とつながっています。

▶ 例:経絡と臓腑の対応関係

  • 肝経 × 肝臓・情緒・筋肉:イライラ・引っ張り癖・けいれん傾向
  • 脾経 × 胃腸機能・免疫:食欲不振・軟便・疲れやすい
  • 腎経 × 生殖・老化・骨:足腰の衰え・冷え・高齢犬のケア
  • 肺経 × 呼吸・皮膚・免疫:アレルギー体質・咳・毛艶の低下
  • 心経 × 血液循環・感情:不安・興奮しやすい・動悸様症状

また、それぞれの臓腑とつながる感情は以下のように対応しています:

  • 肝 → 怒り・興奮(緊張、イライラ、攻撃的)
  • 心 → 喜び(過剰になると興奮、不安)
  • 脾 → 思慮・悩み(執着、元気のなさ)
  • 肺 → 悲しみ・喪失感(意欲低下、食欲不振)
  • 腎 → 恐れ・不安感(分離不安、過敏反応)

このように、経絡を整えることは、 単に体の表面をケアするだけでなく、 内臓の機能やメンタルバランスにまで影響を与える“全体調整”の手段でもあるのです。

経絡ケアはまさに「体と心を結ぶケア」。
日々の触れ合いを通して、ワンコの中から元気を引き出していきましょう!

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